子守唄研究室
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ねんねこ通信

タイトル:ねんねこ通信38号
日付:2009/6/27(土)

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 ねんねこ通信 38号  2009.6    http://komoriuta.cside.com/
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◎目次

●ボスニア・ヘルツェゴヴィナ

●福島県の子守唄

●コラム−福島のむかし話(福島県国語教育研究会編)

●編集後記

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◆ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
 旅行社のツアーでクロアチア、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに行って
きました。それぞれに複雑な歴史的を持つ国々ですが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
紛争は、ユーゴースラビアから独立した時に起きた、1992年から1995年まで
続いた内戦です。
 街はすっかり落ち着きをみせていましたが、移動途中に見える景色の中に戦禍はま
だ残っていました。紛争があったことを忘れないようにと作られた公園で、子ども達
が遊んでいました。戦後に生まれた幼い子ども達でした。
 私達のバスを運転してくれたのはボスニア・ヘルツェゴヴィナの青年達でした。彼
等は自分達の手で勝ち取った自国の平和を誇っていました。運転席で自国讃歌のCD
をかけていました。内容は分かりませんが「ヘルツェゴヴィナ」が何度となく繰り返
される度に、彼も一緒になって歌っていました。時には手を振り上げて・・・。
 民族浄化が発端となった紛争は、また何時くすぶり出すかもしれません。この平和
が永遠に続くことを願っています。
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◆福島県の子守唄

 福島県と言われて思い浮かぶ事といえば「相馬野馬追」ではないでしょうか。今年
は7月22・23・24に行われるそうです。私はニュースでしか見たことはありま
せんが、この祭りは「国指定重要無形民俗文化財」になっています。
 福島県からは、たくさんの子守唄が採集されていました。
 
 ねんねんころりよ ねんころり
 坊やはよい子だ ねんねしな
 あの山越えて 里超えて
 里の土産に 何もろた
 でんでん太鼓や 笙の笛
 坊やはよい子だ ねんねしな

 ねんねんころりよ ねんころり
 坊やのお家の 母さんは
 ころころ小芋で 飴作った
 甘いとろりの 飴の味
 坊やにあげよか この飴を
 坊やは泣かずに ねんねしな
 
 ねんねんころりよ ねんころり
 坊やのお里の お祭りは
 どんどん太鼓や 笙の音で
 お守りの前に 立つ幟(のぼり)
 坊やに見せよか 獅子の舞
 坊やはよいこだ ねんねしな
 この唄は田村郡滝根町で採歌されたと書かれていますが、野馬追い祭りを唄ってい
るのでしょうか。

 ねんねん根山の柴栗コ 
 笑んで溢れて 拾われて
 お茶屋の鍋でうでられて
 売られて買われて 食べられて
 その皮取りて投げられた
 
 盆来りゃうれし 正月来りゃうれし
 うれしのお花は どこに咲く
 野にも咲かぬ 里にも咲かぬ
 石山御寺の門に咲く
 坊や眠ったらなにくれべ
 赤いまんまに砂糖かけて
 ざくりざくりと進ぜましょう
 眠ったごほうびに赤いご飯(小豆ご飯)にかけられるものに「魚・お茶・とろろ」
があげられていました。

 ほらほらほらの豆 えんど豆
 豆のはっぱをつよつよと
 つよつよ飲ませて遊ばせて
 遊ばせながらも泣かせるな
 泣かせるなやろめはどこのやろだ
 泣かせるやつこと おんだしてやれ

食べ物が出てくる唄を3つあげました。始めの唄は遊ばせ唄のように思われます。
子どもを相手に面白おかしい仕草であやしている姿が想像できます。次の唄は、貧し
い食生活で、せめてもの贅沢がこのようなものであったということでしょう。このよ
うな内容の唄は全国各地に見られます。

 
 ねんねんさいさい 童子丸(どうじまる)
 おがさんは信田に帰るから
 ちょうちょう とんぼも殺すなよ
 行燈(あんどん)障子も嘗めきるな
 隣の子どもも泣かせるな
 ねんねんさいさい 童子丸

 ねんねんぱんぱん童子丸
 母は信田の狐でも 父は名高い保名さま
 ねんねんぱんぱん
 寝ろでば寝ないかこの餓鬼奴
 寝ろでば寝ないのはどこの子だんべ
 原町街道のおさんどんの子
 おさんどんの御亭(ごてい)さ破れ道心坊
 やぶれにも破れにも大やぶれ

 この2つの唄は狐が人間と結婚し子どもが生まれたが、正体がばれて追われていく
母狐の伝承話に起因しているものと思われます。童子丸は陰陽師・安倍清明の幼名で
す。「恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」この一首を残して狐
は信太の森に帰っていったと言うことです。

 向かいの山から 雌ん鳥雄ん鳥 飛んできた
 雌ん鳥のいうことに 姉御の腹に子がある
 子があらば好いことよ
 女子ならぶっ潰せ 男ならたすけろ
 名はなんとつけ候 八幡太郎とつけ候
 八幡太郎の厩に 馬なんびきたて置いた
 四十六ぴきたて置いた
 なかのなかの好い馬に 油ひいて 鞍置いて
 とっととっとと乗って行った
 女の子と男の子のどちらを間引きするかという時に、その地方でどちらが役に立つ
かということが問題になります。機織りが主な産業であるところでは、間引きされる
のは男の子でした。

 守り子しあきた 叱られあきた ウアウア
 他人の晩飯も 食いあきた ウアウア
 ねんねんねやまの おんつぁまは ウアウア
 かかほしかかほし 何しんだ ウアウア
 洗濯させたり まま煮たり ウアウア
 夜はぽたぽた 抱いて寝る ウアウア

 守りほど楽なようで 辛い商売ね ウアウア
 ひとの軒端に 立ち寄れば ウアウア
 犬めに吠えられ 子に泣がれ ウアウア
 雨が降ってきたし 洗濯物めれる ウアウア
 背中でがきゃ泣く 飯ゃこげる
 口減らしのために子守りに出された子どもの年齢は、7〜8歳だったといわれてい
ます。そのような子ども達にとって、子守りは本当に辛い仕事だったと思います。
 少ししか紹介できませんでしたが、次の機会をお待ちください。
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◆コラム−福島のむかし話(福島県国語教育研究会編)
 本の初版は昭和52年10月1日で、それを私が手にしたのは今年の5月です。
 方言が随所に使われていますが、その横に小さな文字で説明されていますので、何
の抵抗もなく読み進むことが出来ました。57編載っています。

 子育て地蔵さま
 むかし、小坂に庄兵衛という名主がおったと。庄兵衛さんは情け深く神仏を大事に
する、信心のあつい人だったというんだな。
 ある日のこと、庄兵衛さんが村を見回っていたとこ、道端で、わらしどもが遊んで
いたと。よく見るっつうと、わらしどもが遊びに使ってんのは、石の地蔵様だったん
だちけ。地藏さまば、なわでしばったり、どろの中さころがしたりして遊んでいたっ
けど。庄兵衛さんは、わらしどもが、そだことしていっとこさ、通りがかったもんだ
から、「何ちゅうばちあたりのことをする。地蔵さまば、そだふうに、そまつにして
なんねえ。」・・・・といって自宅に持ち帰り、きれいに洗って床の間に飾っておく
、その夜地蔵様が庄兵衛さんの夢の中に現れて「私が子ども達と楽しく遊んでいたの
に、こんな所に置かれて迷惑だ。元にもどしてくれ」恐縮した庄兵衛さんは道端に小
さなお堂をたて、扉が自由に開閉できるようにしたところ、今までのように子どもと
遊ぶ姿が見られるようになった。
 この地蔵さまと遊ぶ子どもは皆元気に育ち、病気の子どもこの地蔵さまにお参りす
ると快復したということで「小坂の子育て地蔵さま」として有名になった。

 各地でみられる話ですが、方言で書かれているとその地方独自の物語として楽しめ
ます。これが、声に出されるともっと違った親しみがわくのではないでしょうか。
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◆編集後記
 前々から訪ねてみたいと思っていたクロアチアに行って来ました。近隣のスロベニ
アやボスニア・ヘルツェゴヴィナにも立ち寄りました。近年まで戦禍のただ中にあっ
た国ですので、その痕跡がいたる所に残っていました。でも人々は皆やさしく思い出
深い旅になりました。
 その時のツアーでご一緒した方から「福島のむかし話」と相馬・双葉地方のマンガ
「わくわく伝説」を送っていただきました。そんなご縁で私の宝物が増えました。
 ありがとうございました。
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