子守唄研究室
研究室へようこそねんねこ通信子守唄リンク集
研究リポート書き込み掲示板TOPページへ
ねんねこ通信

タイトル:ねんねこ通信34号
日付:2008/11/5(水)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ねんねこ通信 34号  2008.11    http://komoriuta.cside.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◎目次

●東京での事件

●アイヌの子守唄

●コラム−アイヌ神謡集(知里幸恵編訳)

●編集後記

============================================================================
◆東京での事件
 医療が比較的充実している東京でも、救急車がどんなに早く患者のもとに行き着い
ても、命がたらい回しされて助からないという事がありました。
 一人の妊産婦が頭痛を訴えて掛かりつけ産院運ばれましたが、異常を察した医師が
救急車を要請しました。東京都が誇る救急病院では、当直医が一人しかいないとの理
由で断られてしまいました。いくつかの大学病院にも断られ、結局は始めの病院が非
番の医師を呼び寄せてやっと診察を受けることが出来ました。赤ちゃんは無事生まれ
ましたが、数日後、残念ながら母親は亡くなってしまいました。
 国は子育て支援に力を入れていると言っていますが、子育て以前の出産医療のこと
についてはまだまだ足りません。医療ミスなどで裁判になることを恐れて、産科医が
減っているのも事実ですが、このような問題にも国が責任をもって取り組んで欲しい
ものです。安心して子どもを生める国にしなければ、日本の未来はありません。
============================================================================
◆アイヌの子守唄
 アイヌ語で子守唄のことを「イフムケ(音を出して子どもをあやす)」と言われて
いるそうですが、所によっては「イフンケ」「イウンケ」「ユンケ」「イヌムケ」「
イヌンケ」などと、地方によって訛りがあるようです。

 テタ マクタ(むかしむかし)
 マクン フチ(大昔の おばあちゃんの)
 イフムケ(子守唄だよ)
 ハタハ ンー(ハタハ ンー)
 チシル エカチ(よく泣く 子だ)
 ペヌチ ハウェ(泣く声が)
 イエ クルカ スウエ(自分の上に響くよ)
 ハタハ オー(ハタハ オー)
 オロロロロロ(あやし言葉)
 ハオ ハオ ホイ(あやし言葉)   (十勝地方)

 トイ カワ ホプニペ モコンネ(地上から立ち昇るものが眠りだろうか)
 モム カワ ホプニペ モコンネ(流れの上から立ち昇るものが眠りだろうか)
 アヨロ タ カムイ シンタ(アヨロに神の揺りかごが)
 ラン ワ クス アンペ モコンナ(降りたところから起こるのが眠りですよ)
 アフ ワ アフ(サケはといわれる掛け声)  (日高地方)

 ピルカ ピルカ(よいな よいな)
 タント シリ ピルカ(きょうは天気よいな)
 ピルカ ピルカ(よいな よいな)
 イナンクル ピルカ(どの人よいか)
 ピルカ ピルカ(よいな よいな)
 イナンクル クヌンケ(どの人選ぼう)  (釧路地方)
 唄の意味からとれば若者の恋歌のようにも思われますが、地方によっては「鬼遊
び唄」としても使われているそうです。
 
 ホー チーポ チプ(そらこげ 舟を)
 ハウ ワ ハウ(ハウ ワ ハウ)
 ※繰り返す             (日高地方)
 赤ん坊をシンタ(揺りかご)にのせてゆすりながらうたう「シンタ スイェ イフ
ムケ(揺りかごをゆする子守唄)」と呼ばれています。
 神謡の中で、神々や神々が育てた英雄が戦地に向かう時、シンタという飛行機に乗
り家の中から飛び立ったとの表現があり、空中を飛ぶ乗り物をシンタと呼ぶのだそう
です。

 フワ ハエン(フワ ハエン)
 ウシシキナ ハ オスラ(ウシシキナは棄てろ)
 フワ ハエン(フワ ハエン)   (日高地方)
 この唄は「クマの子守唄」と言い伝えられていて、冬眠から覚めた親熊が子熊を連
れて、食料を探しに出る時に、子熊にうたって聞かせる唄だそうです。フワ ハエン
とは、親熊が子熊に「気をつけなさいよ」といって出す警戒の声で、ウシシキナはミ
ズバショウのような毒分のある草のこと。冬眠していた熊がこれを食べて下痢を起こ
し、腸内をきれいにして食欲を起こし乳の出をよくする催乳剤なのだそうです。しか
し、子熊には有毒なので「棄てろ」と教えているのです。 
============================================================================
◆コラム−アイヌ神謡集(知里幸恵編訳)
 私がこの本の存在を知ったのは2年前です。序には大正11年3月1日に書かれた
知里幸恵さんの想いがあふれていました。

 その昔この広い北海道は、私たちの先祖の天地でありました。天真爛漫な稚児の様
に、美しい大自然に抱擁されてのんびりと楽しく生活していた彼等は、真に自然の寵
児、なんという幸福な人たちであったでしょう。このような書き出しで始まります。

 神謡は神々の自叙の形式をとる比較的短編の詞曲(歌われる叙事詩)とあります。
神様には、動物神、植物神、物神、自然神があり、「神のユーカラ(神謡)」とも言
われているそうです。アイヌ独特の発音はローマ字表記になっています。
 彼女は、時の流れの中で消え失せてしまいそうなアイヌ文化を記録するという、大
きな責任ある仕事を果たしたのです。残念なことに、原稿を書き終えた9月19日、
19歳の若さで病に倒れ亡くなってしまいました。
 この著作の影の力となった金田一京助氏は、彼女の才能を讃え、またその死を悼む
言葉を載せています。
 秋の夜長の読書の一冊にお薦めします。(岩波文庫32−080−1)
============================================================================
◆編集後記
 先日テレビで、アイヌ神謡集を書いた知里幸恵さんのことが放映されました。この
本を買ったものの、さらりとしか読んでいなかった私は、大きなショックを受けまし
た。心血を注ぎ命を懸けて書かれていたことを理解もせず、面白い神話だと片付けて
いました。北海道旅行で白老のアイヌの皆さんにお会いしてから、もう40数年たっ
ていましたが、その映像から当時のことが少しですが思い出されました。
 それにしても19歳の女性が書いたとは思えない文章に、脱帽し畏敬の念を覚えま
した。
============================================================================
このメールの配信を今後希望されない方は、お手数ですが、次のURLから配信中止の
手続きをお願いします。
http://komoriuta.cside.com/nenneko/koudoku.html
----------------------------------------------------------------------------
●子守唄研究室

・ホームページアドレス
http://komoriuta.cside.com/
・メールアドレス
komoriuta@cside.com

============================================================================

<<次の号 前の号>>


戻る