

タイトル: ねんねこ通信 6号
日付:2003/7/28(月)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ねんねこ通信 6号 2003.7 http://komoriuta.cside.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎目次
●子守唄をうたっていますか?
●遊ばせ唄--「いない いない バー」は今も健在
●コラム--オーラル・ヒストリー総合研究会
●編集後記
============================================================================ ◆子守唄をうたっていますか? こんなことを言うと「今さら何を?」と思われる方も多いでしょう。先日、若いお 母さん方と話をする機会があり、このことを話題にしてみました。「添い寝もしない し、寝かせるとき傍にもいない、ベビーベットですから・・」 子守唄を聞きながら、安心して眠る。ぬくもりや安堵感を得られて育った子、得る ことが出来なかった子、成長していく中で違いが現れるのでしょうか。 最近の事件を考えると、生育歴との関係を考えてしまいます。そう言えば、背負い 紐で赤ちゃんを負ぶっている姿も、この頃あまり見かけなくなりました。 ============================================================================ ◆遊ばせ唄--「いない いない バー」は今も健在
子守唄は「子どもをお守りするときに口ずさむ唄」ですから、遊ばせ唄も多くあり ます。「いない いない バー」「おつむ てんてん」「あがり目 さがり目 くる くるまわって猫の目」など、どこか懐かしさのある唄ですが、いま、うたわれている でしょうか。遊ばせ唄には、幼い子どもに言葉を覚えさせる効用もありました。
ちょち ちょち (両手を打つ) あわわ (片手を口に当てて声を出す) かいぐり かいぐり (両手を胸の前で前後にぐるぐる回す) とっとの目 (人差し指で手のひらを突く) おつむ てんてん (両手又は片手で頭を軽くたたく) いないいない (両手で顔を覆うーー目をつぶらせたりもする) バー (覆っていた手をはずす) 「いないいない バー」は、少し大きな子どもになると、身体ごと隠すかくれんぼ のようになります。子どもはキャアキャア言いながら、自分が疲れるまで遊びます。
大やぶ(眉毛) 小やぶ(まつ毛) 光り窓(目)に 蜂の巣(鼻) 碁石(歯)に ぼた餅(頬)に きいくらげ きいくらげ(耳) 大人が幼児に向かい、うたいながら自分の顔をさわらせて遊ばせる。と、解説がつ いていました。(愛媛県)
親指眠れ、さし指も 中指、紅指、小指みな ねんねしな、ねんねしな、ねんねしな。(愛媛県) 指を一本ずつ折っていって、グーにして、子どもにも眠るように誘いかけるのでし ょうか。 しったらしったら あっあっわ (手をたたく) きゃあぐり きゃあぐり とっとの目 (両手をぐるぐる回す) ちいちぼ ちいちぼ ちいちいぼ (手のひらを人さし指でつく) 頭てんてん 腹ぽんぽん (頭、腹を軽くたたく) がってん がってん がってんこ (頭を下げてうなずきあう) あやしている姿が目に浮かぶような唄です。(愛知県)
かいぐりかいぐり とっとの目 とっとのおめめは何を見る 町へ行っては 花電車 花電車ほしいと 泣くおめめ (山形県・静岡県) いろいろアレンジされたものがうたわれています。
つたい歩きが出来るようになると、ひとり立ちや起ち歩きを促すように「あんよは おじょず ころぶはおへた」と、少し離れた所からうたいながら手拍子を打って歩み を誘います。ご褒美はなぜか「ここまでおいで 甘酒しんじょ」なのです。 佐賀県にはこんなはやし唄があります。 てアうちにゃ てアうちにゃ (田を打ちなさい) ひだねぎ(左杵)にゃ ぎっかんしょ(ぎくしゃくしている) みぎぎにゃ ようりょり(よろよろ) 子どもをあやす時にうたったり、子どもがやっと歩けるようになったころ、その姿 をみながら親がうたう。と書かれています。
いいちく たあちく たアまんご かえでりゃ ひよこ 羽がはえたら バータバタ(兵庫県) 歩き始めた幼児に、身振り手振りよろしく笑わせながら、歩行への興味付けをする。
以前、農家の女性達の暮らしぶりをお聞きした時「嫁は働き手だったから、子守り は年寄りの役目だった」と話してくれた方が多くいました。それを裏付けるようなこ んな唄もありました。
ひて ひて こすれ 若くなれ としより(長野県飯田市) 老人が日向ぼっこなどしながら、だっこしている孫のやわらかいひたいに、自分の しわ深いひたいをすりつけながらうたうもので「若さをみどりごから分け与えてもら いたい」との老人の願望が込められているーーーと解説されています。 ============================================================================= コラム オーラル・ヒストリー総合研究会 今年発足したばかりの会ですが、子守唄も聞き取り調査が主ですから、一緒に研究 や活動をしたいと思い入会しました。オーラル・ライフ・ヒストリーは以前から口述 資料として使われていましたが、近年になって学問として確立されるようになってき ました。 私が使わせてもらっている資料に「日本伝承童謡集成第1巻 子守唄篇」がありま す。昭和17年から4年間かけて編さんされたもので、編さん者は北原白秋です。手 元にある資料は昭和49年に改訂されたもので、旧仮名使いから新仮名使いに改めら れているので、読みやすくなっています。全国から3462篇が収集されています。 編さん方針として「われわれは文献としてこれらの資料を提供し、この文献を対象 としてその後の研究があらゆる角度から浸潤するであろうことを確信する」とありま した。私もその恩恵にあずかっている1人ですが、これらの作業が戦争中に行われて いたことに、驚きを覚えずにはいられません。印刷会社が空襲で丸焼けになってしま ったこと、発行時はGHQ(連合軍総司令部)の管轄下あり、すべての出版物は厳重 な審査を受けなければならなかったこと、沖縄を九州地方に入れて校正刷りを提出し たら「沖縄は日本領土ではない、このままでは出版を許可しない」といわれたことな ども書かれていました。 このこと一つをとっても、真実を事実として書き残しておくことの重要さを感じて います。
=========================================================================== 編集後記 遊ばせ唄には、子育ての奥義が込められていることに気付きました。「這えば起て、 起てば歩めの親心」の言葉通り、子どもは遊びながら、歌いながら言葉を覚え、その 地域の風習を教えられていくのです。その風習の良し悪しは別として、大人の社会に 入る準備をしていたのです。 何か大事なものを放っておいたような、申し訳ない気持ちです。 ============================================================================ このメールの配信を今後希望されない方は、お手数ですが、次のURLから配信 中止の手続きをお願いします。 http://komoriuta.cside.com/nenneko/koudoku.html ---------------------------------------------------------------------------- ●子守唄研究室
・ホームページアドレス http://komoriuta.cside.com/ ・メールアドレス komoriuta@cside.com
============================================================================
<<次の号 前の号>>

|